世界屈指の写真美術館「ICP」において、1970年代生まれのアーティスト5人にスポットを当てた展示会が開かれています。「2010年の視点」と題されたタイトルの通り、写真家や映像作家など5人の独創的な「視点」が見どころ。デジタルという共通点の他、政治や社会問題、ヒューマニズムといった各々の主題を掘り下げたメッセージが作品の端々に感じられました。中でも特に印象に残った2人の作品を紹介したいと思います。
ロシア人女性、レナ・ハーゾグによる「ロスト・ソウル」は、遺伝子異常で誕生前に母体で死を迎えた赤ちゃんや、標本化された胎児を映したシリアスな作品。ともすれば目を背けたくなる生命の残酷さを女性ならではの優しい眼差しでとらえ、ある種の美しさをもってモノクロ写真におさめています。そこには生へのメッセージが確かに込められていて、軽視しがちな生命の尊さを、無言のうちに、強く悟しているかのようでした。
もう1人は米国人。76年生まれのホンアン・トルオングによる「アダプション・フィーバー」。仏植民地時代におけるベトナムの映像を用いて何とも不思議なビデオ作品に仕上げています。過去の「記憶」と「現実」とのギャップ。その曖昧さを鏡の効果などで暗示し、ベトナムの歴史を通して記憶の真実に迫っています。
総じて5人の作品が印象的だったのは、キュレーターの言葉を借りると「歴史と記憶の関係を日常生活の視点からも捉えている」ことにあると思います。教科書通りの歴史にとどまらない、多角的な目で写し出す真実。5人の視点は歴史を再認識するための「始点」でもあったようです。








