
今年の夏、ここニューヨークで何とも珍しい写真集が出版されました。「First, jay comes.」と題されているものの、表紙にはそのタイトルが見当たらず、初めの頁に日本語で「最初にカケスがやってくる」とだけ記されている不思議な構成。写真の内容も、抽象的なペインティングが織り交ぜられており、これまでにない斬新な印象を受けました。(新人の作家かな?)その名を確かめるとさらにびっくり。「東京郊外」「東京の子供」でおなじみの現代写真家、ホンマタカシだったのですから。出版社は大手ではなく、知る人ぞ知るハッスラ・ブックス社。(大手出版社から作品を発表してきたホンマさんが、なぜインディペンデント出版社を選んだのだろう?)すっかり興味をそそられた私は、オーナーであるデイビッド・ショアナー氏を訪ね、お話を伺いました。
一ファンとして、いつの日かホンマさんと仕事がしたいと熱望していた彼は、その思いを一通のメールに託しました。サイズや頁数等にとらわれない体裁で、値段は誰でも手の届きやすい設定に。写真界では異色ながらも、出版社としての確たる信念と、新たな挑戦へ向かうホンマさんの開拓精神がひとつに繋がった結果、「First, jay comes.」が生まれたのですね。
2人のやりとりは全てメールで行われ、写真のレイアウトや構成の一切をホンマさんに任せたそうです。アーティストの感性を最大限に引き出し、個性を守ろうとする写真哲学。作品集=本ではなく、あくまで本自体が作品であり、アートである。商業主義とは一線を画し、芸術そのものを出版しているのだと。ショアナー氏から大切なものを教えられた気がします。