October 01, 2010

Photographer's Place


 私がニューヨークの写真学校で学んでいた頃、ソーホーに「フォトグラファーズ・プレイス」というお店がありました。ギャラリーをまわった課外授業の帰り道、先生に連れられて中へ入ると、ダゲレオ・タイプをはじめとするヴィンテージ写真やアンティークカメラ、古い写真集などが所狭しと並んでおり、そこに写真の原点が垣間見えて心動かされたのを覚えています。やがてソーホーからギャラリーの撤退が相次ぎ、私の写真学校の卒業と時を同じく、このお店も姿を消してしまいました。


 あれから10年が経った同じ場所。先日、ソーホーのマーサーストリートを歩いていると、ヴィンテージ写真を売る露店の前を通りかかりました。そういえばこの辺りに懐かしのお店があったような。露店の椅子には眼鏡をかけた白髪の老人。何となく声をかけてびっくり!偶然にも彼が「フォトグラファーズ・プレイス」の元オーナーだったのです。白髪と眼鏡が印象的なハーベイ・ズッカーさん。お店を畳んだ後は、アンティーク写真やカメラを扱うディーラー業の傍ら、路上で写真を広げて売っているのだそうです。


 「人生はマグネットのようだ」ズッカーさんは小さい頃からダゲレオ・タイプやカメラに惹きつけられ、気付けば膨大な数のコレクションが集まっていたのだとか。「駄菓子屋の子供と一緒だよ」と独特の比喩が続きます。フォトグラファーズ・プレイスは、写真好きが無邪気に楽しむお店だったのでしょう。いかにも自由人な彼のスタンスは「主人にも奴隷にもならない。好きな事をやっているだけ」何だか羨ましくて、私こそ磁石のように惹かれたお人柄でした。