
エンパイアステートやロックフェラーといった高層ビルが林立するニューヨーク五番街。商業的な空気に満ちた大通りにも芸術の芳香が放たれ、各種ギャラリーが摩天楼を見上げるように点在しています。チェルシー地区でよく見られる現代アートを主流派とすると、五番街は通好みの個性派ぞろい。ユージェーヌ・アジェやエドワード・ウェストンなどの古典的な作品も見られる、エドウィン・ホウク写真ギャラリーでは、往年の名アーティスト「マン・レイ」のヴィンテージ写真が展示されていました。
1890年にユダヤ系ロシア人として生をさずかり、ニューヨークのブルックリンで育ったマン・レイは、米国のモダニズム隆盛期にマルセル・デュシャンらと切磋琢磨しながら多感な20代を過ごします。1921年には渡仏してパリに拠点を移し、ハーパース・バザー誌をはじめファッションやポートレイト写真家として活躍。商業写真家として腕をふるう傍ら、光と陰の効果を用いた「レイヨグラフ」という写真術を開発し、他の作家には真似できない、ソラリジェーションによる独特な作品を数多く残しました。
パリ時代の彼は、相反する芸術の流れに属し、米国人でありながら欧州人でもあり、商業写真家だけでなく、アヴァンギャルドを代表する芸術家として、ひとつの枠に収まることはありませんでした。モダニズム、ダダ、シュールレアリズム、そしてアヴァンギャルド芸術家として輝かしい経歴を持ち、20世紀アートに多大な影響を与えた彼の人気はいまだ衰えることなく、作品はかなりの高額で取引きされているのだそうです。