
分野を問わず、創作活動のプロセスにおいて、畑違いの芸術家や作品からインスピレーションを得ることは多分にあるかと思います。ところが写真家に限ってみると、他分野のアーティストに影響を与えたというエピソードは意外にも少ないようです。それでもひとり挙げるとすれば、彼の名はアーロン・シスキンド。
ウィリレム・デ・クーニやジャクソン・ポロックといった抽象画家たちがシスキンドに共感。現代アートの巨匠、ロバート・ラウシェンバーグの作品にも、彼に通ずる表現が感じられます。1991年、享年87歳で幕を降ろしたシスキンドの写真人生を辿ってみましょう。
ニューヨーク・フォト・リーグ所属の1930年代、ハーレムを映したドキュメンタリー写真で名を馳せたものの、1943年以降は作風を大幅にチェンジ。ストリートのありふれた光景の中から、剥げたペンキや壁などの近影が主になったようです。クローズアップした被写体でグラフィカルな模様を表現し、より抽象的な作風へと移行していきました。もともと英語教師であったシスキンドは写真家教育にも積極的。1950年に出会ったハリー・キャラハンの誘いもあってイリノイ工科大学で教鞭をとり、晩年にはロードアイランド・デザイン学校でも教えていたそうです。
先日、チェルシーのギャラリーで彼の作品を目にしました。オリジナルのネガから新たにプリントしたもので、港のロープや、ペンキの剥げた壁シリーズが展示されていました。モノクロ写真とはいえ、どれも時代を感じさせない新作のよう。これを見た新鋭アーティストたちは、何を感じとるのでしょうね。